Introduction
英ガーディアン紙・英国映画協会〈BFI〉による
年間ベスト作品に選出!
世界の評論家を騒然とさせた虚構と現実の揺らぐ衝撃作!
長編映画初監督作品である『螺旋銀河』(2014)で第11回SKIPシティDシネマ映画祭にて、SKIPシティアワードと観客賞のW受賞を果たした草野なつか監督による長編第2作『王国(あるいはその家について)』。
2016年度愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品として製作された本作は、2017年に64分版が発表されて以降、再編集を施された150分版としての上映は第11回恵比寿映像祭や新文芸坐、三鷹SCOOLなどや映画配信サービスMUBIでの限定配信のみだった。
今回、オムニバス映画「広島を上演する」の一編である最新作『夢の涯てまで』が、マルセイユ国際映画祭2023でのワールドプレミアに続き第24回東京フィルメックス メイド・イン・ジャパン部門へ選出されたことを記念し、待望の劇場公開となる。
脚本を務めるのは、『螺旋銀河』で共同脚本として参加し、『ハッピーアワー』などでも知られる高橋知由。出演者には澁谷麻美、笠島智、足立智充ら実力派俳優たちが名を連ねている。
『王国(あるいはその家について)』は演出による俳優の身体の変化に着目。
脚本の読み合わせやリハーサルを、俳優が役を獲得する過程=“役の声を獲得すること”と捉え、同場面の別パターンまたは別カットを繰り返す映像により表現する。ドキュメンタリーと劇で交互に語るその手法は脚本が持つ可能性をも反復し、友人や家族という身近なテーマを用いて人間の心情に迫ることに成功している。
誰もが「王国」を作り上げると同時に、その支配からも逃れている。新たな映像言語でその試みの全貌を伝える綱渡りのような150分間。
Story
出版社の仕事を休職中の亜希は、一人暮らしをしている東京から、1時間半の距離にある実家へ数日間帰省をすることにした。それは、小学校から大学までを一緒に過ごしてきた幼なじみの野土香の新居へ行くためでもあった。
野土香は大学の先輩だった直人と結婚して子供を出産し、実家近くに建てた新居に住んでいた。その家は温度と湿度が心地よく適正に保たれていて、透明の膜が張られているようだった。まるで世間から隔離されているようだと亜希は思った。
最初は人見知りをしていた野土香の娘・穂乃香は、亜希が遊びの相手をしているうちに彼女に懐いた。一方、野土香からはとても疲れているような印象を受けた。
数日後、亜希は東京の自宅にいた。彼女は机に座り手紙を書いていた。夢中でペンを走らせ、やがて書き終えると声に出して読み始める。
「あの台風の日、あの子を川に落としたのは私です」
そして今、亜希は警察の取調室にいる。
野土香との関係や彼女への執着、直人への憎悪について、亜希は他人事のように話し始めた。
Director’s Biography
草野なつか Natsuka Kusano
1985年神奈川県出身。東海大学文学部文芸創作学科卒業。2014年、『螺旋銀河』(第10回CO2助成作品)で長編映画を初監督。同作は第11回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて、SKIPシティアワードと監督賞を受賞。長編2作目である本作『王国(あるいはその家について)』は、
ロッテルダム国際映画祭2019、第11回恵比寿映像祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭などで上映される。今年最新作の短編『夢の涯てまで』が、マルセイユ国際映画祭2023でワールドプレミアとして上映されるなど、常に世界中の映画評論家から注目を集める監督である。
『螺旋銀河』
2014 / 73min/ 日本
◆第14回ニッポン・コネクション/ニッポン・ビジョン審査員賞受賞
◆SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014監督賞/SKIPシティアワード受賞正式出品
『夢の涯てまで』
2023 / 24min / 日本
◆マルセイユ国際映画祭2023 ワールドプレミア正式出品
◆第24回東京フィルメックス メイド・イン・ジャパン部門正式出品
Cast
澁谷麻美
1987年生まれ、鹿児島県出身。映画、CM、ナレーション等で活躍。モデル活動を経て2013年から本格的に俳優業を開始。主な出演作は、映画『螺旋銀河』(15/草野なつか監督)、『蝶の眠り』(18/チョン・ジェウン監督)、『船長さんのかわいい奥さん』(18/張元香織監督)、『まだ見ぬあなたに』(19/小澤雅人監督)、『滑走路』(20/大庭功睦監督)、『ゆめのまにまに』(22/張元香織監督)、『ピアニストを待ちながら』(23/七里圭監督)などがある。
Asami Shibuya
笠島智
1984年生まれ、東京都出身。2013年『ミスターホーム』(池田千尋監督)で映画初主演、2016年にSWANNY主宰公演『花はどこへ行ったの?』で初舞台を踏む。以降、多数の舞台や映画・ドラマ・CMなど幅広く活躍。主な出演作に『ひかりの歌』(18/杉田協士監督)、『ナナメのろうか』(22/深田隆之監督)、舞台では鵺的『夜会行』(21/作:高木登/演出:寺十悟)、鬼の居ぬ間に『jeanne』(21/作•演出:望月清一郎)、城山羊の会『温暖化の秋-hot autumn-』(22/作•演出:山内ケンジ)、『SHELL』(23/作:倉持裕/演出:杉原邦生)がある。
Tomo Kasajima
足
立
智
充
1979年、静岡県出身。舞台、映画、ドラマ、CMなどで幅広く活躍。2023年に映画「夜を走る」にて第23回日本映画プロフェッショナル大賞 主演男優賞を受賞。主な出演作に『お嬢さん』(16/パク・チャヌク監督)、『きみの鳥はうたえる』(18/三宅唱監督)、『孤狼の血LEVEL2』(21/白石和彌監督)など。公開待機作に三宅唱監督作品『夜明けのすべて』がある。
Tomomitsu Adachi
役の声を獲得する。
映画の枠を越えて新たな挑戦に挑む俳優陣。
Screen writer
高橋知由 Tomoyuki Takahashi
1985年生。日本大学大学院芸術学研究科映像芸術専攻修了(修士)。大学在学中から脚本を学ぶ。主な脚本作に『不気味なものの肌に触れる』(13/濱口竜介監督)、『螺旋銀河』(14/監督•共同脚本:草野なつか)、『 23/白鍵と黒鍵の間に』(監督•共同脚本:冨永昌敬)など。ドキュメンタリーの構成を担当した作品に『ちかくてとおい』(15/大久保愉伊監督)。映画監督の濱口竜介・野原位と結成した脚本ユニット「はたのこうぼう」のメンバー。はたのこうぼう名義の脚本作として『ハッピーアワー』(15/濱口竜介監督)がある。また、劇作家・演出家の松田正隆が主宰する演劇カンパニー「マレビトの会」の『福島を上演する』(2017年、18年公演)に劇作メンバーとして参加。
Comment
Goods
本作劇場公開を記念して、高橋知由さんの手がけた脚本を冊子に致しました。
劇中に登場する「供述調書」や「手紙」も収められたこちらのシナリオブックは、「王国」の中に入っていくようなビジュアルデザインとなっております。
公開中の劇場でご購入頂けるほか、
オンラインや、各所書店でも取り扱いがございます。
▼オンライン販売(cogitoworks SHOP)
https://cogitoworks.stores.jp
▼書店(順次販売開始)
模索舎(新宿)
六本木蔦屋書店(六本木)
古書ビビビ(下北沢)
タコシェ(中野)
コ本や(神楽坂)
ゆうらん古書店(経堂)
販売価格 1,000円(税別)
A5サイズ/108p
ポレポレ東中野ほか書店にて随時発売決定!
Staff
出演:澁谷麻美、笠島智、足立智充、龍健太
監督:草野なつか 脚本:高橋知由
撮影:渡邉寿岳 音響:黄永昌 助監督:平波冝
美術:加藤小雪 衣裳:小笠原由恵 ヘアメイク:寺沢ルミ 編集:鈴尾啓太、草野なつか
写真:黑田菜月 演出助手:神田友地 手紙文作成:高橋知由、遊谷麻美
イラスト・タイトルデザイン:さいとうよしみ エンディング曲:GRIM 「Heritage」
エグゼクティブ・プロデューサー:越後谷卓司 プロデューサー :鈴木徳至
愛知県美術館美術品収集委員会・オリジナル映像部会委員:天野一夫、岡田秀則、岡村恵子、酒井健宏
企画:愛知芸術文化センター 制作:愛知県美術館 配給:コギトワークス
宣伝プロデューサー:村上知穂 宣伝:大橋咲歩、本多克敏 宣伝デザイン:三浦樹人
予告編:川添彩
2018年/カラー/スタンダード/150分